はじめに
日本の三大国家資格といわれている公認会計士。
難易度が高いけれど、高収入が保証される資格として大学生からキャリアチェンジを考えるエンジニアやはたまた看護婦まで、様々な受験層がいる資格です。
しかしその実態は、実はあまり語られることはありません。
合コンで「職業は公認会計士」を伝えると、、、
「え、何それー」
「税理士みたいな感じ?」
確実にわかってもらえません。
そんな公認会計士の魅力から勤務実態まで今回は徹底解説してみたいと思います。
なお当記事は公認会計士の主な就職先である監査法人を前提に記載しています。
ぶっちゃけ公認会計士の年収は?
まずは誰しもが気になる年収から話しましょう。
全て包み隠さず話します。
初任給は、、、
30万円!
さて、これが多いかどうかは人によってとらえ方が違うかもしれません。
私個人としてはやっている1年目の子がやっている業務からすると貰いすぎじゃないかなーと思ったりします。
ちなみに職位が変わらないとほとんど昇給はなく、ボーナスくらいの変動しかなかったりします。
職位別の年収を給料を見てみましょう。
一般に比べるとやはり高収入でしょうか。
一見するとマネージャーになるまで結構給料が高くないなと思われるかもしれません。
パートナーまでくると年収が人によってものすごくずれるらしく、平均するとこれくらいかなという印象です。
パートナーの初年度は1,500万程度だという噂もちらほら。
ちなみにアメリカのBig4 で働くとパートナーは3,500万くらい貰うようです。
夢がありますね。
では残業を入れていきましょう。
個人的にはそれなりにもらっているなと思うのですが、受験生だったころの記憶が遠すぎて、皆さんの期待を超えているのかがわかりません。
順調に行った場合の昇格スピードはこんな感じです。
職位 | 次の昇格までの期間 | 累計キャリア年数 |
スタッフ | 4年 | |
シニアスタッフ | 3年 | 7年 |
マネージャー | 4年 | 10年 |
シニアマネージャー | 3年 | 13年 |
ストレートに大学を卒業した人ですと20台中盤で800万円~900万円が見えてきます。
ちなみに現状ですと昇格の難易度は、
シニアスタッフ → ほぼなれる
マネージャー → 時間をかければなれるが、その前に辞めていく人多数(ここまでで半分くらいになる印象)
シニアマネージャー → パートナーを見据えた人だけがなるので3割くらい
パートナー → かなり難しい。なりたくて本気で働いていてもなれない人が相当数おり入社時からの割合だと1割くらいか。
という感じのイメージです。
公認会計士試験は、どれくらいの難易度なの?
三大資格というくらいだから難しいんだろう、、、というのは皆さんのイメージにあるはずです。
一般的に言われるのは3,000時間の勉強で受かる試験だということ。
これは割と正確なんじゃないかなという気が個人的にしています。
私も大体2年間で3000時間くらいの勉強で合格しました。
3,000/(365 * 2) で一日4時間しか勉強していないのかよ。。。という突っ込みはさておき。
1年でも1日8時間~9時間の勉強でいけるのであれば大学受験生の気持ちでがんばれば、いける!と思われる方も多いかもしれません。
ちなみに10年間かけても受からない人も聞いたことがある試験なので、気軽に受けれる試験ではないですね。
では実際に詳細を見てみましょう。
試験制度
公認会計士試験は三次試験まであります。
公認会計士になるまでのイメージは次のようなルートになります。
一般的には、2次試験が終わってしまえば、監査法人に就職できて、会計士のキャリアを開始できるため2次試験までの公認会計士試験と呼ぶことが多いですね。
1次試験は短答式試験と呼ばれ、複数選択式問題です。
12月と5月の年2回試験があり、どちらかに合格すると2次試験に進めます。
科目は
- 財務会計(外部に公表する財務諸表を作るための会計)
- 管理会計(経営管理に役立てるための会計)
- 会社法
- 監査論
の4科目
複数選択式だけど、かなり難しいです。
70%程度とると合格です。
2次試験は論文式試験です。こちらは年に1度だけで8月に開催されます。
- 会計学(財務会計と管理会計の両方より出題)
- 会社法
- 監査論
- 租税法
- 経営学、経済学、民法、統計学の中から1つを選択
の5科目になります。租税法が入るのがかなり大変です。
気になる合格率は?
短答式が2回に分かれており、また、前年度の短答式合格者も論文式を受けられるので実は合格率の計算は難しいです。
公認会計士・監査審査会が出している合格率を見てみましょう。
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
出願者 | 10,180 | 10,256 | 11,032 |
合格者数 | 1,051 | 1,108 | 1,231 |
合格率 | 10.3% | 10.8% | 11.2% |
司法試験等の他の難関試験に比べると合格率は高いといえるかもしれません。概ね10%程度くらいでしょうか。
ただ、試験免除の制度が多いので1年合格となるとこれより低くなります。
一応平成27年~平成29年のデータを用いて以下の過程で計算してみました。
・1年目は12月の短答試験には勉強が間に合わず、記念受験
・全科目欠席者は合格率から除く
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
短答式 | 14% | 13% | 10% |
論文式 | 38% | 40% | 41% |
全体 | 5% | 5% | 4% |
この通り初年度の人にとってかなり不利な試験になります。
受からないわけではないので、5%も受かるんだっと思えるメンタルの人は1年合格を狙ってもいいかもしれませんね。
一般的な2年以上の合格を目指す場合には先ほどの10%程度を目安にしていいかと思います。
公認会計士の仕事内容は?
ほとんどの人が公認会計士試験に合格すると監査法人という主に上場会社の監査をする法人に入所します。
監査は主に
- 財務諸表監査
- 内部統制監査
の2つに分かれます。
財務諸表監査
上場会社の財務諸表が適正かどうかのチェックをすることで、投資家が上場会社の出したものを信頼してもいいですよというお墨付きを与える仕事です。
では、どうやってチェックをするかというと、銀行に問い合わせ(確認状)を送って口座残高のチェックをしたり、請求書を見て企業が記帳した費用が正しいかを確かめます。
、、、楽しくなさそうですか。
そうですね、この部分はあまり面白くありません。
数字の一致を確かめるだけの単純作業だったりするので、なかなか退屈ですがスタッフは、このような仕事がほとんどですね。
上級スタッフからシニアスタッフになると少し楽しい話が増えてきます。例えば、のれんの減損、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性(用語がわからなかったらごめんなさい。。)といった分野の監査には、企業の事業計画の監査をすることになります。
このときに経営者や経営企画の人からビジネスの話を深く聞いたり、ディスカッションができるわけですね。
20代の人が実際に経営に携わっている偉い人と対等にディスカッションができるので、かなりいい仕事の機会に恵まれいるといえるのではないでしょうか。
また、シニアスタッフからマネージャーになってくると難しい議論が多くなってきます。
例えば企業買収の際に買われる会社の資産と負債を時価評価するのですが、どうやって時価を計算しますか?ということを専門家と議論したりするわけですね。
また、会計は思った以上にグレーゾーンの幅が大きいです。
会計士の受験生ですと答えがある問題をひたすら解く訓練をするのでいつの間にか、ある取引はどうすべきだという答えが会計基準に書いてあると思いがちなんですが、この処理をどうすべきだという議論をすることが少なくありません。
例えば私の場合ですと月に1回くらいは基準に乗っていない処理を聞かれて、ほかの例や取引の実態を考えて回答している感じですね。
関与している会社が大きいと論点も多くなってきます。議論や考えることが好きな人からすると楽しめる業務内容かもしれません。
マネージャー以上になると1年に一度は経営者ディスカッションというものがあり、社長と話す機会があります。
大体上場企業はどこもやっているはずなので、有名な社長さんと(新卒からであれば)30歳を少し過ぎた程度の人が話せる機会はそうそうないのではないかと思います。
内部統制監査
これは会社の業務の仕方が正しい会計をするために適切ですかということを保証する業務です。
上場企業は必ず財務諸表監査と合わせて受ける必要があります。
この監査でやることは基本的に
- 会社の取引の開始から会計への記帳までの業務をヒアリングすること
- 実際に聞いた内容を会社がやっているか記録を確認すること
が大きい業務になっています。
日本の内部統制監査は、過去からかなり形式的なことが多かったのですが、近年実態のある内部統制の監査をする方向に傾いており、より会社がミスを防げる仕組みができていますかという視点で業務ができます。
この監査は実はかなり勉強になります。
大体4年くらいの内部統制監査を経験すれば会社の業務のどこにリスクがあって、どう改善すべきかが見えてきます。
ちなみに通常監査人が監査する業務は以下のようなプロセスです。
- 販売プロセス
- 購買プロセス
- 在庫管理プロセス、製造プロセス
- 人事プロセス
- 財務プロセス(借入、有価証券、デリバティブ等の管理)
- 決算財務プロセス
- 固定資産プロセス
かなり企業の広範囲の業務にかかわっていることがわかるかと思います。
労働環境はどう?
この記事を書く前にかなりツイッターで会計士受験生界隈の人のアカウントを見ていたのですが、
「会計士は働きにくい」
「官僚組織っぽい」
というネガティブなイメージを持たれている方がかなり多い印象でした。
決してそんなことはありません。
組織はかなりフラットで風通しが良いです
スタッフやシニアスタッフでもパートナーにどんどん意見が言えてしまう環境です。
チームや場所によって違うことも否定はしませんが、メンバーの中がよいところも多く、やりづらいなと思うことはほとんどありません。
ただ、働く時間は結構ハードです。
特に大企業に行くと9時から22時くらいが当たり前になっています。
法人もコンプライアンス意識はあるので、過労死レベルの残業には基本的になりませんが、決算時期の4月は土曜日も日曜日も仕事なんてこともままあります。
長時間働くことは覚悟したほうがいいかもしれません。
決算期が忙しいなら、、ということで6月と8月は閑散期になります。
この時期であれば1週間連続で休むことは難しくないので、海外旅行に行ったりする人も多いですね。
ぶっちゃけキャリアはどう?
公認会計士になる人は、だいだい90%くらいの人が一生監査法人に努めようとは思っていません。
転職前提の資格だったりするわけですね。
じゃあ実際に転職前提の場合会計士ってどうなの?っという話を最後にしましょう。
正直私は転職前提での会計士はかなりありだと思います。
ビジネスマンの3種の神器の一つである会計の専門家なので転職先がいっぱいあることは言うまでもありません。
ただ、私が注目しているのは以下の2つの点ですね。
- ネットワークファームが強力
- マネージャー経験が若いうちからできる
ネットワークファームが強力
まず、監査法人に入れば、そのネットワークファームには、コンサルティング、フィナンシャルアドバイザリー業務(企業価値算定等)、税理士法人が大体あります。
それらのネットワークファームに転籍することはそれほどハードルが高いものではありません。
じっくり働きながら、自分に合いそうな業種を探せるのでその点特にどんな分野で働きたいか決めきれない人にぴったりなんですね。
マネージャー経験が若いうちからできる
監査法人って大体7、8年でマネージャーになれるんですよね。
もし新卒で入ればまだ30歳くらいなわけです。
それで管理職が経験できるというのは実はほかにないかなり大きいメリットなんですね。
転職市場にでれば、必ず聞かれるのがこのマネージャー経験です。
当然ですが、企業からすれば管理職を取ろうとするのに管理職の経験がない人をとるのはすごく危険なんですよね。
さすがに日本企業では、30歳から転職していきなり課長というポジションは少ないですが、外資系の企業であれば、30歳で監査法人でマネージャーを経験してから面接を受けるとマネージャーポジションを用意してくれるところもあるみたいですね。
オファーが1,500万円を超えることもあるとか。
これは極端な例ですが、若いうちから転職に必要な経験が多くつめるのは事実かもしれません。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は実際に会計士として働いている立場からかなり踏み込んだ内容を書いたつもりですが、少しでも会計士に興味を持っていただけたら幸いです。
ハードルが低い試験ではないですが、年収・経験を考えれば十分目指す価値のある資格だと思います。
ここに書ききれなかったこともたくさんありますので、もし疑問点等ありましたら是非ご連絡をください。
公認会計士。毎四半期、数百社くらいの決算資料を趣味で読みながら特徴的な決算について解説しています。「〇〇最終大幅赤字」といった表面的な報道があまり好きではなく、しっかり中身を語りたい。業界別に企業を比較しながら優良企業の強みにせまります。海外業務中心なので米国企業も強め。
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